鉄の栄養と働き
鉄は、私たちの体には無くてはならない必須微量ミネラルのひとつであり、体内には1kgあたり約70mgの割合で含まれています。体内ある鉄の多くは、血液中の赤血球成分ヘモグロビンとして、残りは、筋肉中にミオグロビン、肝臓や脾臓にフェリチンの形で蓄えられている。鉄は肺で得た酸素を全身へ送り届ける為に必要な成分であり、赤血球の寿命である120日を迎えると赤血球は脾臓で破壊されるが再利用される。その他、汗や尿によって1日1mg程度が排泄されるほか、女性においては月経(生理)によって1日0.5~1mg程度を消失するため一層不足に陥りやすい傾向にある。
体内のおける鉄の働きと酸素の運搬
鉄は酸素を運搬するのに重要な働きをしている為、わたし達が生きていく上で無くてはならないミネラルの1であります。わたし達が生きる為には、肺で得た酸素を全身の細胞に酸素を送り届ける必要があります。肺で得た酸素は、赤血球の中にあるヘモグロビンという成分と結合します。このヘモグロビンは、鉄とタンパク質で出来ており、酸素や二酸化炭素を鉄との結合力を血流にのり全身に送り届けます。その為、体内の鉄が欠乏して起きる貧血は、酸素が十分に送り届ける事ができず酸素消費量が多い器官に症状があらわれます。
体内のおける鉄の働きと貯蔵鉄
上記のとおり、鉄は非常に生命を維持するのに非常に重要な成分の1つです。その為、鉄分が枯渇しないように体内に貯蔵する事ができます。これを貯蔵鉄をいいます。体内の鉄が足りなくなると、フェリチンが分解されてヘモグロビンやミオグロビンの材料になります。そのため一時的な不足があっても、すぐにその兆候が出ることはありません。しかし不足状態が長く続くとやがて貯蔵鉄も枯渇し、貧血やその他の欠乏症状が表れます。
鉄の栄養所要量
日本人の1日の鉄の必要量は成人男性で10ミリグラム、成人女性で12ミリグラム、妊娠後期や授乳中で20ミリグラムといわれます。鉄の多くは、体内で再利用されますが、女性は月経(生理)による失血により失っております。その為、しっかり女性は鉄分を補給する必要があります。また、鉄欠乏性貧血の患者さんは、疾患や体質によって鉄分の吸収が低下している事もあり、食事では十分の鉄分が供給できない場合には鉄剤を使用する事もあります。
妊娠、授乳期における鉄の所要量
妊娠期や授乳期における鉄の存在は、非常に大きく、元気な赤ちゃんを産む為には非常に重要な栄養素の1つです。妊娠も後半になると赤ちゃんも成長をし、お母さんと子どもの血液が必要になります。ですので妊娠すると赤ちゃんの発育のため、多くの鉄分が必要になり、妊娠を希望している方はいつ妊娠しても良いように、妊娠中の方は母子共に元気に出産を迎えられるように、毎日の鉄分摂取を心掛けましょう。また、出産した後も鉄分は必要です。産後の体調回復に大切な役割を果たす他、赤ちゃんに与える母乳のもと「血液」の材料になります。しっかり血液がつくられなければ、栄養満点の母乳は出てくれません。授乳中も引き続き、欠乏する事無く積極的に摂るようにしたいものです。
鉄の栄養所要量
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推奨量 |
成人男性 |
7.0mg |
成人女性 |
6.0mg |
妊婦 |
(初期) +2.0mg
(中期・末期)+15.0mg |
授乳婦 |
+2.5mg |
鉄の詳しい栄養所要量についてはここを参照
鉄の栄養と欠乏症と過剰症
鉄の摂取量が少なく起こす欠乏症には鉄欠乏性貧血があります。また、逆に過剰摂取は通常の食生活ではほとんどありませんが、薬やサプリメントなどから誤って大量摂取した場合は鉄沈着症などの過剰症がみられるため、摂取量などに十分に注意して適切なご利用をこころがけてください。
鉄による過剰症状と欠乏症
項 目 |
具体的な症状 |
鉄過剰症 |
ヘモシデローシス:組織、特に肝臓と脾臓に高度のヘモシデリンの滞留が認められる。 ヘモクロマトーシス:摂取したFeの吸収過剰、Fe結合タンパク質の過飽和、特に肝臓、すい臓、脾臓および、皮膚におけるヘモシデリンの沈着を特徴としている。進行は肝硬変、糖尿病、青銅肌の発症をきたし、末期には心不全を起こすこともある。
(過剰症の詳しい情報) |
鉄欠乏症 |
貧血症状を呈し、倦怠感、頭痛、食欲不振、重症では上皮が障害されることによる口腔内粘膜損傷に伴う疼痛や口内炎を呈する。
(欠乏症の詳しい情報) |
【備考】 |
体内の鉄が欠乏すると、赤血球をつくれなくなり鉄欠乏性貧血になるおそれがあります。貧血は、体内の酸素輸送能力が低下するものであり、酸素を多く消費する組織(器官)から症状が現れやすいです。その為、頭痛がしたり、すぐ疲れたりといった症状がでたり、心臓はこれを補ってフル回転するので、どうき・息切れをしやすくなります。女性は月経による出血や妊娠・出産によって鉄が失われる分、男性よりたくさん必要です。成人女性の5人に1人が鉄欠乏性貧血であるといわれ、また中学・高校の女子生徒の貧血有病率が増加していることから、食生活を見直すと同時に必要な鉄をきちんと摂取することが重要です。
鉄が多く含まれている食品
鉄の多い食品といえばレバーを思い浮かべることが多いようですが、そのほかにも魚、貝、大豆、緑黄色野菜、海草など、鉄を豊富に含む食品はたくさんあります。肉・魚・レバーなど動物性食品に含まれるヘム鉄と、野菜・海草・大豆など植物性食品に含まれる非ヘム鉄があります。国民健康・栄養調査結果によると、私たちの口に入る鉄は非ヘム鉄の方が多いようですが、ヘム鉄の方が非ヘム鉄より吸収に良いという事から貧血の改善におすすめです。また、食事からの鉄分の摂取が難しい場合ではサプリメントを利用するという手段もあります。一方、非ヘム鉄はビタミンCや動物性たんぱく質といっしょにとると、その吸収効率をアップできることが知られています。つまり、野菜・海草・大豆には、果物・肉・魚を組み合せるとよいということです。
鉄が多く含まれている食品(単位:mg)
豚肉(レバー) |
13.0 |
あおのり(乾) |
74.8 |
鶏肉(レバー) |
9.0 |
ひじき(乾) |
55.0 |
レバーペースト |
7.7 |
きくらげ |
35.2 |
パセリ |
7.5 |
あさりの佃煮 |
18.8 |
はまぐりの佃煮 |
7.2 |
煮干し |
18.0 |
牛肉(センマイ) |
6.8 |
抹茶 |
17.0 |
豆みそ |
6.8 |
干しえび |
15.1 |
たまごの卵黄 |
6.0 |
ピュアココア(粉) |
14.0 |
鉄の吸収促進・吸収阻害する因子
鉄には、肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や大豆などに含まれる「非ヘム鉄」があります。吸収率はヘム鉄が25~30%であるのに対し、非ヘム鉄は5%と低くなっています。また非ヘム鉄は、食物繊維、お茶のタンニン、ほうれん草のシュウ酸、多量のカルシウムなどにより吸収率が低下します。また、タンパク質と一緒に摂取する事吸収効率が高くになりますのでおすすめします。牛乳には、大量に摂ると鉄の吸収を邪魔するカルシウムが多く含まれています。しかし同時に鉄の吸収を促す成分CPP(カゼインホスホペプチド)も含まれているため、食事として一般的な範囲で牛乳・乳製品を摂っても心配ありません。
CPPと鉄を一緒に摂取すると小腸の下の方でもう一度汲み上げてくれるので、吸収率が上がります。あとは、有機酸やビタミンCと一緒に摂取する事で吸収率は上昇をします。詳しくはここをクリックして参照してください。
鉄に関する情報
鉄に関する詳しい情報
鉄の栄養所要量
鉄の吸収を促進阻害する因子
鉄の過剰症
鉄の欠乏症
鉄について詳しい情報はこちらを参照
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