セレンの栄養について
セレンは、1817年に発見された元素で、ギリシア語の月 (selene) に因んで名付けられました 。古くから毒性の強い元素として知られていましたが、比較的最近、人にとって必須の微量元素であることが認識されるようになりました。生体内では、酵素やたんぱく質の一部を構成し、抗酸化反応において重要な役割を担っていますが、毒性が強く、必要量と中毒量の差がとても小さいため、サプリメントなどの摂取には注意が必要です。セレンは藻類、魚介類、肉類、卵黄に豊富に含まれており、通常の食事で不足することはありません。
セレンの化学的特性
セレンは元素記号Se、原子番号34、原子量78.96の金属です。多くの同素体 (同一の元素から成る単体で性質の異なる物質) が存在しますが、灰黒色の金属セレンが最も安定です。硫黄、硫化物中に少量含まれて産出され、化学的性質も硫黄によく似ています。濃硫酸、硫酸には溶けますが、水、希硫酸、塩酸には溶けません。
セレンの吸収
食品中のセレンの多くは、たんぱく質に結合して存在し、その吸収はたんぱく質の吸収と同時に行われると考えられています。消化管からの吸収率は50%以上と、高値を示します。ヒトの体内には体重1
kg当たり約250μgのセレンが存在し、体内での恒常性は、尿中への排泄により保たれています。
セレンは、過酸化水素やヒドロペルオキシドを分解するグルタチオンペルオキシターゼの構成成分です。ビタミンEやスーパーオキシドジスムターゼ (SOD)
などと共に、抗酸化システムに重要な役割を担っています。この他、アスコルビン酸の再生、甲状腺ホルモンの活性化と代謝に関係する酵素の構成成分でもあります。
セレンの栄養の働き
セレン(セレニウム)は、ギリシャ語の月(Selene)に因んで名付けられました。かつては毒性の強い元素として知られていましたが、抗酸化機能を有するミネラルとして注目されています。また、セレンは亜鉛・マグネシウムと共に、有害ミネラルの解毒に有効なミネラルです。
セレンの主な働きは次の通りです。
体内におけるセレンの働きは、①抗酸化作用 ②精子の形態維持 ③重金属毒性の軽減 ④赤血球凝集能や溶血球形成能などの一次免疫応答の促進 ⑤がん細胞の細胞増殖抑制機能 があります。
セレンの栄養所要量
セレンの栄養所要量は以下の通りです
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セレンの推奨量 |
成人男性 |
30μg |
成人女性 |
25μg |
妊婦 |
+5μg |
授乳婦 |
+20μg |
セレンの詳しい栄養所要量についてはここを参照
セレンの栄養による欠乏症と過剰症
通常の食生活でセレン不足が問題となることは、日本ではほとんどありません。セレン不足は、土壌中のセレン濃度が極端に低い地域において、摂取不足により起こります。セレンは毒性が強く、必要量と中毒量の差がとても小さいため、サプリメントなどの安易な摂取には注意が必要です。
セレン不足はどのようにして起こるのか?
通常の食生活でセレン不足が問題となることは、日本ではほとんどありません。セレン不足は、土壌中のセレン濃度が極端に低い地域において、摂取不足により起こります。
セレンが不足すると、どのような症状が起こるのか?
セレンが不足すると、過酸化物による細胞障害が起こると考えられます。セレンの欠乏症の一つに、低セレン地域である中国東北部に見られる克山病 (心筋症の一種)
がありますが、亜セレン酸塩の投与で発症が予防されます。また、同じく低セレン地域である中国北部やシベリアの一部で、カシン・ベック症 (地方病性変形性骨軟骨関節症)
が思春期の子供に認められ、セレン欠乏の関与が示唆されています。この他、完全静脈栄養施行時に、下肢の筋肉痛、皮膚の乾燥、心筋障害などが起こると報告されています。また、セレンの含有量の少ない食事を摂取している場合、発ガンのリスクが高いことが示唆されています。
セレン過剰摂取のリスク
セレンは毒性が強く、必要量と中毒量の差がとても小さいため、サプリメントなどの安易な摂取には注意が必要です。セレンを慢性的に過剰摂取すると、爪の変形や脱毛、胃腸障害、下痢、疲労感、焦燥感、末梢神経障害、皮膚症状などがみられます
。セレンをグラム単位で摂取すると、重症の胃腸障害、神経障害、心筋梗塞、急性の呼吸困難、腎不全などを引き起こします。
セレンには、過剰症状と欠乏症があります。
項 目 |
セレンにおける具体的な症状 |
セレン
過剰症 |
脱毛、爪の変形と脱落、皮膚障害、神経障害などの症状が認められている。
(セレン過剰症の詳しい情報)
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セレン
欠乏症 |
カシン-ベック病が有名。15歳以下の小児と妊娠可能年齢の女性に頻発し、心肥大、心筋壊死、線維化を主徴で致死率が極めて高い。
(セレン欠乏症の詳しい情報)
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セレンの栄養が多く含まれている食品
セレンが多く含まれている食品について(単位:μg)
小麦 |
.1~1.9 |
海藻類 |
0~0.02 |
肉類 |
1.0~8.0 |
茸類 |
.0.03~0.09 |
魚介類 |
0.2~1.0 |
葉野菜類 |
0~0.01 |
鶏卵 |
0.2~9.5 |
牛乳 |
0.03~1.3 |
(セレンが多く含まれている食品リスト)
セレンの吸収促進・吸収阻害する因子
詳しくはここをクリックして参照してください。
セレンに関する情報
セレンに関する詳しい情報
セレンの栄養所要量
セレンの吸収を促進阻害する因子
セレンの過剰症
セレンの欠乏症
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