リンの栄養について
リンは、錬金術の実験中に発見された元素で、青白く光る燐光から名付けられました。リンはすべての生物に必須のミネラルで、エネルギー代謝や脂質代謝などにおいて重要な役割を担っています。また、カルシウムとともに骨格を形成する働きもあります(1)。リンは多くの食品に含まれているため、調理による損失を考慮しても不足することはありません。むしろ、食品添加物として各種リン酸塩が加工食品に広く添加されていることから、リンの摂取過多が憂慮されています。
リンの化学的特性
リンは元素記号P、原子番号15、原子量30.97の非金属です。天然ではリン酸塩の形で産出され、生物体中では複雑な有機化合物として存在します。
リンの消化、吸収
生体内のリンは約80%がカルシウム塩として存在し、骨や歯の成分となっています。その他のリンは、生体膜のリン脂質、DNAやRNAといった核酸の成分、また、ATPなど高エネルギーリン酸化合物として、エネルギー代謝や脂質代謝などに重要な役割を担っています。リンは小腸で吸収されますが、吸収、代謝については十分には明らかにされていません。成人におけるリンの吸収効率は60~70%です。ヒトの血清中のリン濃度の正常範囲は0.8~1.6
mmol/Lで、食事からのリン摂取量が、血清リン濃度と尿リン排泄量に反映されます。その際、副甲状腺ホルモンの分泌の割合によって調節され、血清リン濃度は正常範囲内に維持されます。血液中のリン酸塩は、血液のpHの維持や酸塩基の平衡維持に関わっています。
リンの栄養と働き
体内に最も多く含まれるミネラルはカルシウムですが、ついで多いのがリンで成人体重の約1%(50kgで約0.5キログラム)にあたります。そのうち80%がマグネシウムやカルシウムと結びついて、それぞれリン酸マグネシウムやリン酸カルシウムとなって骨組織に付着、骨や歯などの硬組織を形成しています。残りはたんぱく質や脂質、糖などと結合した有機リン酸化合物として、すべての細胞に存在します。
リンの栄養所要量
リンは核酸やATP、細胞膜やリンたんぱく質などの構成成分となります。リンが不足すると骨軟化症やくる病、骨の石灰化の遅延などの原因にもなります。しかしながらリンは動物性食品にも植物性食品にもまんべんなく含まれているので、通常の食生活をしていれば不足する事はまれです。清涼飲料水やカップめん、スナック菓子などにも各種リン酸塩としてよく使われているので、むしろ過剰に取りすぎることの方が心配です。血液中のリンとカルシウムのバランスは3:10~7:10で保たれており、この比率が崩れてリンが多くなると、バランスを維持するために骨組織にあるカルシウムを血中に取り込むため、リンの取りすぎが逆に骨をもろくする結果となります。リンはバランスよく取ることが大切です。
リンの栄養所要量は以下の通りです
平成21年の国民健康・栄養調査では、男性は平均1,043 mg、女性は平均908 mg摂取しています。ただし、この調査では加工食品に添加されているリンの量は加算されていないため、実際のリン摂取量はこれより多いと予想されています。
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リンの推奨量 |
成人男性 |
1000mg |
成人女性 |
900mg |
妊婦 |
特に付加する必要はありません |
授乳婦 |
特に付加する必要はありません |
リンの詳しい栄養所要量についてはここを参照
リンの栄養と欠乏症と過剰症
リンは、現代の食生活では一般に不足することはなく、むしろとり過ぎが問題です。その原因のひとつに、リンを多く含む食品添加物が加工食品や清涼飲料水などの酸味の素として使用されていることがあげられています。リンはカルシウムの代謝と深く関係しています。カルシウムの摂取量が低く、かつリンを過剰にとる食事を長期間続けた場合、骨量や骨密度が減る可能性があるといわれています。丈夫な骨のためにカルシウムをしっかりとることはみんなが知っていることですが、一方でリンをとり過ぎないことも重要なのです。
リン不足はどのようにして起こるのか?
リンは、日常摂取する食品に多く含まれているので、通常の食生活で不足することはほとんどありません。
リンが不足すると、どのような症状が起こるのか?
長期間、制酸薬 (胃薬) である水酸化アルミニウムを服用すると、リンの吸収が妨げられて胃吸収が起こり、衰弱、食欲不振、倦怠感などの症状が起こることが知られています
。
リン過剰摂取のリスク
リンは食品添加物として、加工食品に広く用いられているため、過剰摂取に注意する必要があります 。長期にわたってリンを過剰摂取すると、腎機能の低下、副甲状腺機能の亢進、カルシウムの吸収抑制などが起こることが知られています
(3) (6) 。リンはカルシウム代謝と関係が深く、カルシウムとリンの摂取比は1~2が理想的とされますが、加工食品の利用が多くなった今日の日本では、摂取比が3になることが多いとされています。
リンには、過剰症状と欠乏症があります。
項 目 |
リンにおける具体的な症状 |
リン
過剰症 |
カルシウムの吸収阻害
(リン過剰症の詳しい情報) |
リン
欠乏症 |
副甲状腺機能亢進症
(リン欠乏症の詳しい情報) |
【備考】
リンは、インスタント食品や加工食品を作る際に食品添加物として使われています。そのため、お菓子やインスタント食品などばかりを食べているとリンの過剰摂取になります。
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リンの栄養が多く含まれている食品
広く動植物食品に含まれていますが、とくに魚類、牛乳・乳製品、大豆、肉類に多く含まれます。また、加工食品や炭酸飲料などにも含まれています。
リンが多く含まれている食品(単位:mg)
しらす干し(半乾燥) |
860 |
しらす干し(微乾燥) |
470 |
プロセスチーズ |
730 |
たらこ(焼) |
470 |
いわし(丸干) |
570 |
あゆ(天然/焼) |
460 |
たまご(卵黄) |
570 |
キャビア |
450 |
いくら |
530 |
あゆ(養殖/焼) |
430 |
いかなご |
530 |
しらこ |
430 |
すじこ |
490 |
うに |
390 |
きんめだい |
490 |
たらこ(生) |
390 |
ベーキングパウダ |
3700 |
脱脂粉乳(粉) |
1000 |
煮干し |
1500 |
干しえび |
990 |
たたみいわし |
1400 |
高野豆腐(乾) |
880 |
するめ |
1100 |
パルメザンチーズ |
850 |
(リンが多く含まれている食品リスト)
リンの吸収促進・吸収阻害する因子
詳しくはここをクリックして参照してください。
リンに関する情報
リンに関する詳しい情報
リンの栄養所要量
リンの吸収を促進阻害する因子
リンの過剰症
リンの欠乏症
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